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名古屋地方裁判所 昭和56年(行ウ)39号 判決 1985年3月25日

愛知県小牧市大字小針字中宮八六番地

原告

南山興産有限会社

右代表者代表取締役

冨田一子

右訴訟代理人弁護士

小久保豊

愛知県小牧市大字小牧一九五〇番地

被告

小牧税務署長

竹中幸男

東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番一号

被告

右代表者法務大臣

嶋崎均

右被告ら指定代理人

岡崎真喜次

塩谷紀夫

大榎春雄

辻中修

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告小牧税務署長(以下「被告税務署長」という。)が原告に対してした、次の各処分を取消す。

(一) 昭和五五年五月二七日付でした原告の左記各事業年度分法人税の各更正及び過少申告加算税の各賦課決定(但し、後記第六期の過少申告加算税の賦課決定については、被告税務署長が昭和五五年一〇月二四付で一部取消したもの)

昭和五一年六月一日から昭和五二年五月三一日まで(以下「第五期」という。)

昭和五二年六月一日から昭和五三年五月三一日まで(以下「第六期」という。)

昭和五三年六月一日から昭和五四年五月三一日まで(以下「第七期」という。)

(二) 昭和五五年一〇月二四日付でした原告の第七期事業年度分法人税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分

(三) 昭和五五年五月二七日付でした原告の昭和五二年三月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知分及び不納付加算税の賦課決定

2  被告国は原告に対し金一五九万九七二〇円を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  第二項について仮執行宣言。

二  被告ら

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

3  担保を条件とする仮執行免脱宣言。

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、昭和四七年六月一六日に設立された、不動産の売買及び斡旋、アパートの経営、これらに附帯する一切の業務を目的とする法人である。

2  原告は、原告の第五期ないし第七期の各事業年度分法人税について別紙一ないし三の各該当欄記載のとおり、確定申告及び修正申告をした(別紙一は第五期、別紙二は第六期、別紙三は第七期についてのものである。)が、被告税務署長は昭和五五年五月二七日付で原告に対し、原告の右各事業年度分法人税について、別紙一ないし三の各該当欄記載のとおりの各更正及び過少申告加算税の各賦課決定(以下、一括して「本件各更正処分等」という。)をした。

3  原告は昭和五五年七月二四日右各処分に対し被告税務署長に異議申立てをし、同日、第七期事業年度分法人税について、次の理由により、被告税務署長に対し更正の請求をした。すなわち、原告は、第七期の所得金額を金六二〇万九八五三円、うち租税特別措置法(以下「措置法」という。)六三条に規定する課税土地譲渡利益金額は金二一八〇万円として修正申告をしたが、原告は、第七期においては、後記被告の主張に対する原告の反論(本件各更正処分等について)記載のとおり、右課税土地譲渡利益金額は存しなかったのであり、また、修正申告において、所得金額の計算に誤りがあり、金六二〇万三三七三円が正しい金額であるとして更正の請求をした。

しかるに被告税務署長は、昭和五五年一〇月二四日付で原告の第六期事業年度分に係る過少申告加算税の賦課決定のうち別紙二の該当欄記載の額を超える部分を取消したのみで、その余の異議申立てをすべて棄却し、更正の請求については更正すべき理由がない旨の通知を原告に対してした。

4  次いで、原告は昭和五五年一一月二一日国税不服審判所長に対して審査請求をした(右更正すべき理由がない旨の通知について原告は被告に異議申立てをしたが、国税通則法九〇条一項の規定により国税不服審判所長に送付され、同条三項の規定により審査請求とみなされた。)が、同所長は、昭和五六年七月二九日、原告の審査請求をすべて棄却する旨の裁決をし、同裁決書の謄本は同年八月一八日原告に送達された。

5  しかしながら、本件各更正処分等(但し、第六期の過少申告加算税賦課決定については、被告税務署長が昭和五五年一〇月二四日付で一部取消した後のもの)は、原告の土地譲渡利益金額の認定を誤った違法なものであり、また、前記更正をすべき理由がない旨の通知は、前記各更正すべき理由が存するのにもかかわらず、これを誤った違法なものである。

6  被告税務署長は昭和五五年五月二七日原告に対し、原告が昭和五二年三月一日に原告代表者に借入金利息として支払った金七八万〇二七三円を役員賞与と認定し、源泉所得税金四万六六〇〇円の納税告知及び金四六〇〇円の不納付加算税の賦課決定(以下「本件納税告知処分等」という。)をした。

7  原告は本件納税告知処分等について、被告税務署長に対し昭和五五年六月二五日異議申立てをしたが、被告税務署長は同年九月二五日右異議申立てを棄却し、次いで原告は同年一〇月二三日国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は、昭和五六年七月二九日右審査請求を棄却し、同裁決書の謄本はその頃原告に送達された。

8  しかしながら、本件納税告知処分等には、支払利息を役員賞与と認定した違法がある。

9(一)  被告税務署長であった石川新三郎は被告国の公権力を行使する公務員である。

(二)  右石川はその職務を行うに当たり故意又は過失により違法な前記各処分をし、かつ、原告の前記各異議申立てに対しても本件各更正処分等について昭和五五年一〇月二四日付けで取消した部分を除いてすべてこれを棄却した。

(三)  原告は右石川の右各行為により本件訴訟を提起するのやむなきに至った。

(四)  原告は本件訴訟を提起するについて原告訴訟代理人を選任し、弁護士費用として金一五九万九七二〇円を支払う旨約し、同額の損害を蒙った。

10  よって、原告は、被告税務署長に対し本件各更正処分等(但し、前記取消された部分を除く、以下同じ。)、前記更正すべき理由がない旨の通知、及び本件納税告知処分等の各取消しを、被告国に対し国家賠償法一条一項に基づき金一五九万九七二〇円の支払いを各求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

(被告税務署長)

1 請求原因1ないし4の各事実は認める。

2 同5は争う。

3 同6.7の各事実は認める。

4 同8.10は争う。

(被告国)

1 請求原因9について

(一) 同9(一)は認める。

(二) 同9(二)、(三)のうち、被告税務署長であった石川が原告主張の各処分及び各棄却決定をしたことは認めるが、その余は争う。右はいずれも適法にされたものである。

(三) 同9(四)は知らない。

2 同10は争う。

三  被告税務署長の主張

(本件各更正処分等について)

1 原告の第五期ないし第七期の法人税に係る本件各更正処分等はすべて措置法六三条に規定する土地の譲渡等がある場合の特別税率の適用についてのものである。

2(一) 原告は第五期ないし第七期において別紙四記載の各土地(以下「本件各土地」という。)を譲渡したが、本件各土地の取得日はいずれも同別紙四記載のとおり昭和四四年一月一日以後であるから、右各譲渡をした右各事業年度の所得に対する法人税の額は、通常の法人税額に、右各土地の譲渡等に係る譲渡利益金額の合計額に措置法六三条の規定による特別税率(百分の二〇)を乗じて計算した金額を加算した金額となる。

(二) 本件各土地に係る譲渡利益金額及び原告の第五期ないし第七期の課税土地譲渡利益金額と税額は別紙五ないし七の各該当欄(別紙五は第五期、別紙六は第六期、別紙七は第七期についてのものである。)記載のとおりであり、その根拠は次のとおりである。すなわち、

本件各土地に係る譲渡利益金額は譲渡による収益の額から原価の額及び譲渡のために直接又は間接に要した経費の額(負債の利子の額、販売費及び一般管理費の額)を差引くことにより算出されるところ、譲渡による収益の額は土地の譲渡の対価であり、原価の額は譲渡に係る土地の譲渡直前の帳簿価額である。そして、原告は、譲渡のために直接又は間接に要した経費の額のうち、第五期及び第六期については販売費及び一般管理費の額を、第七期については負債の利子の額を、それぞれ実額配賦法により計算し、法人税申告書に記載しているが、原告の右実額配賦法による計算は合理的に行われていないので、負債の利子の額並びに販売費及び一般管理費の額とも措置法施行令三八条の四第六項の規定するいわゆる概算法により計算することとなる。本件各土地に係る譲渡の対価の額は別紙四の該当欄記載のとおりであり、原価の額は別紙五ないし七の各「<5>に係る原価の額」欄記載のとおりである(但し、別紙四の順号1.2の各土地及び順号4.5の各土地は、それぞれ一括して取得された土地が分割して譲渡されたものであるから、原価の額は分割前の土地の譲渡直前の帳簿価額に分割前の土地の面積の中に右1.2.4及び5の各土地がそれぞれ占める面積の割合を乗じて求められる金額である。なお、順号5の土地については、右のほか昭和五二年一二月三〇日に金一四万四〇〇〇円の工事費の支出があるから、右計算による価額に右工事費を加算した金額が原価の額である。)。そして、譲渡のために直接又は間接に要した経費の額を前記概算法により算出した金額及びその算出過程は別紙八ないし一〇に記載のとおりである(別紙八は第五期、別紙九は第六期、別紙一〇は第七期についてのものである。)。

3 したがって、原告には、第五期ないし第七期の各事業年度において、別紙五ないし七の該当欄記載のとおりの課税土地譲渡利益金額が存するのであるから、本件各更正処分等は適法である。

なお、第五期ないし第七期に係る過少申告加算税の金額の算出の基礎となる国税通則法六五条一項の納付すべき税額(以下「納付すべき税額」という。)及びこれに同項の定めによる百分の五の割合を乗じて計算した過少申告加算税額は、次表のとおりである。

<省略>

(右納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、別紙一の順号2の修正申告及び別紙二の順号2の修正申告並びに別紙三の順号1の確定申告の税額の計算の基礎とされていなかったことについての同条二項に規定する正当な理由があると認められるものは存在せず、また、別紙一の順号3及び別紙三の順号2の各修正申告は、原告の法人税の申告に係る調査があったことにより法人税について更正があるべきことを予知してなされたものであるから、同条三項の規定の適用もない。)

(更正をすべき理由がない旨の通知について)

原告の第七期事業年度分に係る課税土地譲渡利益金額は、すでに述べたとおりその計算の過程等に誤りはなく、原告の更正の請求に理由はない。

したがって、被告税務署長のした更正すべき理由がない旨の通知は適法である。

(本件納税告知処分等について)

1 原告は昭和五二年三月一日、原告の役員である冨田一子に対して金四六万六八四九円及び金六八万八七六七円の合計金一一五万五六一六円を支払い、これを支払利息として原告の第五期の所得金額の計算上損金の額に算入した。

2 右金員は原告の第五期の帳簿には昭和四九年一〇月三一日に金二〇〇万円、昭和四九年一一月一四日に金三〇〇万円右同人から借入れ、右借入金を各元本としてその借入期間について年一割の利率をもって計算した額を一括して支払った旨記載されている。そして、右金額のうち金七八万〇二七三円は第五期前の事業年度の期間に係るものである。

3 しかし、右借入れについては契約書は勿論利息に関する約定も存在せず、原告の第五期前には右借入金に対する支払利息を支払った旨の記載は原告の帳簿等には見当らない。のみならず原告の第五期前の貸借対照表及び法人税の確定申告書中に右支払利息の元本たる借入金に係る未払利息は計上されていない。

4 したがって、原告が第五期に一括支払利息として損金の額に算入した金額のうち第五期前の期間に係る部分(金七八万〇二七三円)は役員賞与として所得税法二八条一項に規定する給与等に該当するので、同法一八三条一項により原告は右金員について源泉所得税を徴収する義務があった。

そして、原告は同法二一六条に定める源泉徴収に係る所得税の納期の特例の承認を受けていたから、同条および国税通則法一〇条二項の規定により右徴収した源泉所得税を昭和五二年七月一一日までに国に納付しなければならなかったところ、原告はその納付をしなかった。

5 そこで、被告税務署長は所得税法二二一条および国税通則法三六条一項二号の規定に基づき、原告に対し源泉徴収に係る所得税金四万六六〇〇円の納税告知処分及び四六〇〇円の不納付加算税の賦課決定処分をした(その算出過程は別紙一一に記載のとおりである。)。

6 したがって、本件納税告知処分等は適法である。

四  被告税務署長の主張に対する原告の認否、反論

(本件各更正処分等について)

(認否)

1 主張1は認める。

2(一) 主張2(一)のうち、原告が本件各土地を譲渡したことは否認する。本件各土地の譲渡は原告名義でされているが、右は後記原告主張の各組合契約の業務執行としてしたものである。また、本件各土地の取得日、譲渡日は争わないが、右取得も右組合契約の業務執行としてされたものである。

(二) 主張2(二)は争う。

本件各土地の所有権全部が原告に帰属するとしたときの本件各土地に係る譲渡の対価の額及び原価の額、譲渡のために直接又は間接に要した経費について概算法を採用した場合の課税土地譲渡利益金額の計算過程は争わないが、土地譲渡利益は前記各組合契約における原告の持分の限度で原告に帰属するにすぎない。また経費については、第五期、第六期については実額配賦法を採用すべきである。なお、原告が法人税申告書に記載した実額配賦法による計算が合理的に行われていないことは認める。

3 主張3は争う

(反論)

1 本件各土地を取得するに当たっては、本件各土地毎に原告を含む数名の者(各契約における当事者は別紙一二のとおり、但し、不動産番号欄は別紙四の土地番号に対応する。)が「金銭消費貸借契約書」なる標題の契約書(その内容は別紙一三のとおり、但し、同別紙契約書番号欄は、別紙四の土地番号に対応する。)に基づき出資した金員により購入取得し、土地譲渡利益は右出資金に応じてこれを出資者に分配している。

右は以下のとおり民法上の組合契約とみるべきであり、本件各土地の取得、登記、譲渡はすべて原告名義で行なわれているが、民法上の組合の業務執行としてされたものであるから、原告に帰属すべき土地譲渡利益はその持分に限られる。

(一) 出資

前記「金銭消費貸借契約書」による契約(以下「本件各契約」という。)においては、特定の不動産購入代金(それに伴う諸費用を含む)が出資総額と定められ、各出資者の出資金が各別に明示されている(原告の出資額は不動産購入代金と他の出資者の出資額の合計との差額である。)。

(二) 事業

本件各契約においては出資金の使途を特定不動産の購入資金に限定し、かつ、不足金は原告が出捐する旨定められており、特定不動産の購入、利用、売却を事業目的とする全出資者の共同事業である旨が定められている。

そして、その営業は原告が出資者全員の委任を受けて原告名義で行なうこととなっていた。

(三) 利益分配

本件各契約においては利益の分配は総投下資金(出資額合計およびその後に貸店舗等の経営によって資金不足を生じた場合に出資者間の協議によりされる追加出資額の総合計)に対する出資額の割合によって利益を分配する旨定められている。

以上のとおり、本件各契約においては出資、事業、利益分配について明確な定めがされており、本件各契約によって特定不動産から収益を得ることを目的として共同事業をなす合意が各出資者間に成立したということができるから本件各契約は民法上の組合契約であり、講学上の内的組合に該当する(組合の事業の執行は、業務執行者たる原告名義で行なわれている。)。

したがって、原告の課税土地譲渡利益は本件各契約における原告の持分(内訳は別紙一四のとおり)により算出される額(別紙一五のとおり)である。

そして、同一事業年度内に複数の土地を譲渡し、そのうちに原価及び経費が譲渡代金を上廻ったものがあるときは、土地譲渡利益の計算上は全部の土地について損益通算をなすべきであるから、結局、第五期、第六期については原告の課税土地譲渡利益は〇円である(別紙一五参照)。

2 仮に、本件各契約が民法上の組合契約ではないとしても、本件各契約は金銭消費貸借ではない(本件各契約においては「元本の返還」「期間に対応する利率」の定めはなく、かえって「土地売却時の清算」が定められている。)から、結局、組合契約類似の無名契約として組合契約の規定を類推適用するべきである。

3 次に、原告の第五期、第六期の土地譲渡利益の計算上、販売費及び一般管理費について実額配賦法を採用すべき理由は、次のとおりである。

すなわち、原告は昭和四九年七月二四日(原告の第二期分の確定申告をする際)、あるいは同年一〇月ころ小牧税務署の法人税・源泉所得税第三部門統轄国税調査官長江鋭雄から販売費及び一般管理費について指導され、以後、昭和五四年まで原告の第三期、第五期、第六期について右指導に係る方法によって販売費及び一般管理費を計算し確定申告をした(第四期は該当所得はなかった。)。実額配賦法による計算は技術的かつ難解な計算を包含するので一見してこれに疑いをはさむことは不可能であり、税務専門家である長江調査官の指導に従って確定申告した原告には何らの過失もない。

そして、昭和五四年初め頃に至り原告は初めて合理的な実額配賦法の教示を受けたので昭和五五年初め頃合理的な実額配賦法により作成した計算明細書を被告税務署長に提出し、第五期、第六期について修正申告しようとしたところ、渡辺恒憲国税調査官が「争点を土地譲渡利益金額の計算一つにしぼりたいから普通の法人税に係る認定賞与の点に関してだけ修正申告をしてくれ、実額配賦法の中身は争点と共に争われ、どうせ更正処分されるのだからその異議申立てで争ってくれれば同じことだから出してもらわない方がよい。」旨述べ、原告が右計算明細書の計算を修正申告書に記載することを妨害した。

その結果、原告は第五期における合理的な計算方法による実額配賦法選択の機会を失った。

以上の経緯からすれば、信義則あるいは禁反言により第五期、第六期について昭和五五年四月四日に提出された修正申告書には合理的な実額配賦法による計算が記載されているものとして取扱うべきである。

4 したがって、本件各更正処分等は原告に帰属すべき課税土地譲渡利益金額の認定を誤っている。

(更正をすべき理由がない旨の通知について)

被告税務署長の主張は争う。

(本件納税告知処分等について)

(認否)

1 主張1.2は認める。

2 主張3のうち借入れについて利息に関する約定が存在しないことは否認する。その余は認める。

3 主張4のうち、源泉所得税の納付をしなかったことは認める。その余は争う。

(反論)

1 原告は昭和四七年一月三一日株式会社三菱銀行熱田支店から金一七〇〇万円を借入れ、これを次のとおり弁済した。

(一) 昭和四九年七月二七日金五〇〇万円

(二) 昭和四九年一一月一四日金三〇〇万円

(三) 昭和五三年八月三日金九〇〇万円

2 原告は昭和四八年一一月二八日右銀行から金一〇〇〇万円を借入れ、これを次のとおり弁済した。

(一) 昭和四八年一二月一五日金五〇〇万円

(二) 昭和四九年一〇月一日金五〇〇万円

3 原告は1(二)の弁済資金金三〇〇万円を昭和四九年一一月一四日に冨田一子から借入れ、2(二)の弁済資金金五〇〇万円を昭和四九年一〇月一日冨田真、冨田善美から各金二五〇万円借入れた。

なお、右借入れはいずれも原告と右銀行および冨田一子らの合意により冨田一子らの右銀行の普通預金口座から右弁済金相当額を引き落す方法によりされた。

4 原告は昭和四九年一〇月三一日に冨田一子から金二〇〇万円を借入れ、同金員をもって冨田真と冨田善美に対して各一〇〇万円宛前記借入金を弁済した。

5 前記3の借入れをするに当たっては原告と冨田一子らとの間で次の約定がされた。

(一) 弁済期は定めない。

(二) 利率は弁済時において定める。

(三) 利息は弁済時に一括して支払う。

6 原告と冨田一子は昭和五二年三月一日借入金の利率を年一割と定めることに合意し、同日原告は冨田一子に利息として金一一五万五六一六円を支払った。

7 したがって右金員は利息の一括支払である。

8 仮に右金員が役員賞与であるとすると、被告税務署長の本件納税告知処分等は同一の所得に対して二重に課税するものであり違法である。すなわち冨田一子は昭和五三年三月一四日前記金員のうち金七八万〇二七三円(被告税務署長が役員賞与と認定した部分)を雑所得として申告し納税しており、かつ、更正請求権も昭和五四年三月一五日の経過をもって消滅している。したがって原告が右金員について更に源泉徴収義務を負担しなければならないとすると、同一の所得について二重に課税することになる。

被告税務署長の納税告知処分は右冨田一子の更正請求権が消滅したのちにされたものであり、このような場合、被告税務署長の納税告知処分は違法というべきである。

五  原告の主張に対する被告税務署長の認否、再反論

(本件各更正処分等について)

(認否)

1 原告の反論1のうち原告主張の各契約の存在は否認する。したがって、右各契約の存在を前提とする原告の主張はすべて争う。

また、「金銭消費貸借契約書」なる標題の契約書が原告主張の当事者間において作成されたことは認めるが、その内容は争う。

2 同2は争う。

3 同3は否認ないし争う。

4 同4は争う。

(再反論)

1 原告が本件各土地を譲渡したものであることは、次の事実から明らかである。すなわち、<1>本件各土地の取得及び譲渡に関する契約の当事者はすべて原告であり、当該契約に係る代金の授受及び所有権に関する登記をもすべて原告の名義とその責任において行われていること、<2>右売買に関して原告の備付帳簿には、すべて原告の売買として記載され、その帳簿書類の記載に基づく法人税の確定申告書が提出されていること、<3>原告は、本件土地の利用及び譲渡による利益の一部を原告に留保し、残余を原告が各資金提供者に配分していること、<4>資金提供者は、裁決庁の職員に対して、本件土地について原告との間の共有資産としての認識がない旨を供述し、提供資金についてその備付帳簿には貸付金として経理していること、<5>別紙一三の事項「8項」の契約書番号「6」の契約書内容によれば、原告(乙)と資金提供者(甲)との間に「甲乙間はこれら不動産について本契約のとおり履行される限り外に何らの権利義務がないものとする。」と定められていたようであり、原告が購入した不動産の所有権等契約に定めのない事項については、各資金提供者は何らの権利義務を有していなかったものと認められること、等の事情に照らし、措置法六三条一項に規定する土地の譲渡等を行った者が原告であることは明らかである。

2 仮に、本件各土地の譲渡が原告自身の譲渡行為と認められないとしても、本件は原告を営業者とする商法上の匿名組合と解され、その課税関係は、次のとおり被告税務署長の主張(本件各更正処分等について)一と同一であるからいずれにしても原告の主張は理由がない。

すなわち、民法上の組合は、法律行為の効力が組合員の個々につき問題となったり、取引の目的たる商品の複雑な共有関係を認めなければならないようでは事業活動の性質に適しない。そこで、出資者が背後に隠れ、対外的には営業者の個人(単独)事業として現われるところの資本家と有能な経営者との合作による事業形態が考案された。この一つが匿名組合制度である。

この制度は、出資者と営業者との利益が一致するところに成立する。

すなわち、出資者から見ると、その社会的地位・経営手腕・法律的制限(たとえば、公務員・弁護士などの営業制限)などのため、自ら営業者となることを好まないか、またはなることができない場合に、この制度を利用して投資の有利性と秘密化の利益を得る。また、営業者から見ると、受入れた出資に対して利益を分配するだけで、経営の面では他からの干渉を受けない自己の営業であるから、資本関係を秘密にし、自由な経営を行ない得る長所がある。この匿名組合は、合資会社とその起源を同じくし、一〇世紀頃から地中海沿岸で広く行われたコンメンダ契約にさかのぼるが、その一つは資本家も名前を出し、出資額を限度として会社債権者に対し責任を負うもので、他は、従来どおり資本家は対外的には姿を現わさないものであった。前者から合資会社が、後者から匿名組合が生まれたものである。

右のような沿革と実態を有する匿名組合について商法は、匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をなし、その営業より生ずる利益を分配すべきことを約すことによって効力を生ずる(商法五三五条)とし、匿名組合費の出資は営業者の財産に帰属する(商法五三六条一項)ものとしているのであるから、対外的な営業活動及びそれによって得られた財産はすべて営業主に帰属し、出資者は単に営業主の営業活動によって得られた利益の分配にだけ与かるものとされている。したがって、匿名組合には民法上の組合のように共有の組合財産はないから、匿名組合員には共有持分の観念はない。しかも、匿名組合員は営業者の行為につき第三者に対して権利義務を有せず(商法五三六条二項)、自ら業務を執行したり、営業を代表することはできない(同法五四二条・一五六条)とされているのである。

そして、措置法六三条に規定する土地譲渡益重課制度においては、土地の譲渡等をした者を課税対象者と定めているのであるが、右にいう土地の譲渡等をした者は前述の匿名組合の性格から明らかなとおり営業活動を対外的になし、かつ財産の帰属者である営業者であることはいうまでもない。そして、匿名組合契約における匿名組合員は前述のとおり営業者が取得した資産について何らの所有権も有しておらず、単に営業者の権限と責任において行われた営業活動の結果得られた利益についてその分配に与かるにすぎないものであるからこのような者が措置法六三条に規定する課税対象者であるわけはない。

ところが、原告は匿名組合員が営業者に帰属する利益の分配に与かるという実質をとらえて、右利益が措置法六三条所定の譲渡利益金額であるとして、これに応じた課税関係を主張しているが、右主張は、措置法六三条一項に規定する譲渡等に係る譲渡利益と営業者から分配を受ける利益等を全く混同した誤った見解である。

すなわち、土地の譲渡によって得られた利益(措置法六三条二項)はすべて営業主に帰属しているものであって匿名組合員には帰属していないところ、土地重課制度は土地の譲渡によって得られた利益の帰属する者を課税対象者としているのであるから、営業主がこれに該ることはいうまでもなく、それ以後の利益の処分(匿名組合契約による分配金)等は措置法六三条の関知しないところであるから原告の主張が失当であることは論ずるまでもない。

六  被告の再反論に対する原告の再々反論

1  本件各契約は、以下の理由により商法上の匿名組合とみるべきではない。

(一) 匿名組合においては事業者自身の出資額を明らかにする必要がなく、事業者自身の出資額と無関係に他の出資者に対する利益分配率を定めるのが通常であって、かつ、出資総額の変動が予定されているため出資総額を契約中に表示することは不可能かあるいは殆んど意味がないのに対し、本件各契約においては前記のとおり出資総額が明示され、他の出資者の出資額の合計と出資総額との差額が原告の出資額であることから原告の出資額も明らかである。

(二) 匿名組合においては出資の追加は自由であるのに対し本件各契約においては出資総額を変更するについては出資者全員の同意を要するとの趣旨で前記契約書中に貸店舗の経営等のため資金不足が生じたときは出資者間で別途協議する旨定められている。

(三) 匿名組合においては通常利益分配金の計算は個々の組合員の出資期間と出資額に応じてされるが、本件各契約においては前記のとおり出資額に比例して利益の分配がされている。

2  更に本件各契約が商法上の匿名組合であるとしても、本件各更正処分等は違法である。

すなわち、原告は既に本件各契約にしたがい本件各土地の譲渡利益を各出資者に分配しており、原告はその持分に応じた譲渡利益を享受しているにすぎない。

法人税法一一条、所得税法一二条は実質所得者課税の原則を定めており、右実質所得者課税の原則からは原告については原告の享受する経済的利益に限り課税するべきである。

したがって、原告の享受する経済的利益を超える課税をする本件各更正処分等は違法である。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録調書に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  原告の被告税務署長に対する各請求について

1  請求原因1ないし4の各事実(本件各更正処分等の経緯及び更正すべき理由がない旨の通知処分の経緯)及び同6.7の各事実(本件納税告知処分等の経緯)は、いずれも原告と被告税務署長との間に争いがない。

そこで、以下本件各更正処分等、更正をすべき理由がない旨の通知処分及び本件納税告知処分等の適法性について順次判断する。

2  本件各更正処分等について

(一)  原告の第五期ないし第七期の法人税に係る本件各更正処分等がすべて措置法六三条に規定する土地の譲渡等がある場合の特別税率の適用についてのものであることは原告と被告税務署長との間に争いがない。

(二)  成立について争いのない乙第四号証、第五号証の一、二、第六号証ないし第一〇号証、第一一、一二号証の各一、二、第一三号証、第一四、一五号証の各一、二、第一六号証、第一九ないし第二六号証及び弁論の全趣旨によれば、別紙四記載の取得年月日欄記載の各日時に原告を契約当事者(買主)として本件各土地の取得が行なわれ、同別紙記載の譲渡年月日欄記載の各日時に原告を契約当事者(売主)として本件各土地の譲渡がされたこと(右の取得日及び譲渡日は原告と被告税務署長との間に争いがない。)、本件各土地の所有権に関する登記はすべて原告名義によりなされていることの各事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

右各事実によれば、原告は本件各土地の取得及び譲渡を行なったものと推認されるというべきところ、原告は、原告が本件各土地の取得及び譲渡を行なったのは、本件各土地の取得毎に成立した民法上の組合の業務執行としてしたものであり、したがって、本件における措置法六三条の譲渡利益金額は当該組合に帰属する譲渡利益金のうち原告の持分に属するものに限られるべきである旨主張する。

そこで原告の右主張について判断するに、成立について争いのない甲第三四号証の一、二、第三五号証の二ないし一一並びに同号各証及び弁論の全趣旨によって成立を認め得る甲第一号証、第二九ないし第三三号証の各一によれば、本件各土地それぞれについて別紙一二(契約当事者一覧表)記載の各当事者によって、別紙一三(本件各契約書対比表)の日付欄記載の各日時に同表記載の内容の契約(本件各契約)が締結された事実(別紙一二((契約当事者一覧表))の不動産番号欄及び右別紙一三の契約書番号欄の各記載は、別紙四記載の不動産番号に対応するものである。)を認めることができる。

本件各契約の内容は前記のとおり別紙一三に記載のとおりであるが、これを概観すると、いずれも、

(一)原告を除く各契約当事者が一定金額を出捐し、(二)右出捐金額に原告が不足金額を加えて特定不動産を購入し、(三)原告は右購入に係る不動産を貸店舗、駐車場等に使用し又は原告自身が使用する、若しくはこれを売却する。(四)原告が右不動産によって得た収益のうちから「直接の必要経費」(人件費、法人税等は含まない。)を差し引いた残額について、それに一定の割合を乗じたものを原告以外の各契約当事者に出捐額に応じて配分する。

というものであり、右の契約内容及び弁論の全趣旨からすると、原告の本件各土地の取得及び譲渡は本件各契約に基づきされたものであることを認めることができる。

しかしながら、右契約内容から直ちに本件各契約を目して民法上の組合契約を締結したものとみることはできない。すなわち、本件各契約の内容を、更に、仔細に検討してみると、特定不動産の購入、利用、譲渡はすべて原告名義で行なわれるものであり、特定不動産の一定の範囲内における利用方法の選択及び売却をなすか否はすべて原告の判断により行なわれることとされているのに対し、原告以外の各契約当事者は金員を出捐してそれに応じた利益金の分配を受けること、すなわち、原告による購入不動産の運用、処分等から生ずる不確定の利益の分配を受けることのほかは、何ら特定不動産の購入、利用、譲渡に関与しないのであって、(特に、別紙一三の契約書番号6の契約においては原告を除く各契約当事者は購入不動産の管理、処分等について契約のとおり履行される限り、外に何らの権利義務がないものとする旨明記されている。)僅かに資金不足が生じた際に協議して原告を援助する旨の条項が設けられているにすぎない。また、原告が、他の出資者に対し、確定した利子の支払を約するのではなく、原告の前記営業から生ずる不確定な利益を分配することを約している点からして、本件各契約が単なる金銭消費貸借契約であるとはいい難い面があるけれども、右にみた本件各契約の内容及び右各契約書の標題部に「金銭消費貸借契約書」との記載があることからしても、本件各契約の原告を除く各契約当事者(出資者)が、原告が本件各契約に基づいて購入する各不動産について、共有持分権を有するものとは認め難い(本件証拠上、他に本件各契約の対象たる特定の不動産を各契約当事者による共有とすることの合意が各契約当事者に存したことを窺うべき証拠は何ら存しない。)。以上を要するに本件各契約は、本件各契約に基づく事業についてみれば、購入不動産が特定されていること及びその利用方法が当該契約に定める一定の範囲に限定されているほかは原告自身の計算によりされる場合と何ら異ならないのであって、原告以外の各契約当事者は何らこれに関与することはないのであるから、これを各契約当事者の共同事業とみることは困難であり本件各契約に基づいて取得された不動産についてみれば、これを各契約当事者の共有とする趣旨を窺うことはできないのである。

そうすると、本件各契約に共同事業性及び組合財産の共有を認めることはできないから本件各契約を民法上の組合契約と認めることはできない。

(三)  ところで、原告は本件各契約が民法上の組合契約ではないとしても組合契約の規定を類推するべきである旨主張する。

しかし、本件各契約は前記のとおり各契約当事者の共同事業ではなく、原告を除く各契約当事者は単に出捐に応じた一定の利益配当を受けるにすぎないものであるから、これは商法上の匿名組合契約(商法五三三条)に該当するものである。そして商法上の匿名組合の場合はその営業は営業者自身の営業であって、本件の如く土地譲渡についていえば、当該土地譲渡は営業者自身の土地譲渡である。従って措置法六三条の適用上は本件各不動産の譲渡利益金額はあげて原告に帰属するものといわざるを得ず、原告の右主張は失当である。

なお、原告は本件各契約を商法上の匿名組合契約とみるべきでないとして種々主張する(被告の再反論に対する原告の再々反論)が、原告主張の各事由が存するからといって本件各契約が商法上の匿名組合契約でないということはできない。けだし、民法上の組合契約(殊に講学上の内的組合)と商法上の匿名組合とは、共同事業性の有無及び組合財産が共有か否かにその区別が存するのであって、その余の原告主張の各事由は右両者の区別にあっては何ら重要性を有しないからである。また、措置法六三条の譲渡利益の判断にあたっても、当該土地の譲渡が組合財産の共同の譲渡ということができるか否かによってその課税関係を異にするのであるから、仮に本件各契約を原告主張のとおり無名契約とみても、本件各土地を各契約当事者の共有とみることができない以上、措置法六三条の適用上、民法上の組合と同視することはできない。

従って、原告の右主張は失当である。

(四)  更に原告は本件各契約が商法上の匿名組合であるとしても原告は既に本件各契約にしたがい本件各土地の譲渡利益を各出資者に分配しているから、実質所得者課税の原則から、原告の享受する経済的利益を超える課税は違法である旨主張する。

しかしながら、仮に原告主張のとおり既に本件各土地の譲渡利益を各出資者に分配しているものとしても、右分配は商法上の匿名組合における利益分配の性質を有するところ、営業者が該匿名組合の営業により生じた利益をどのように分配するかは、措置法六三条とは何ら関係のない単なる内部関係にすぎないものであることは明らかであって、該匿名組合の内部において措置法六三条による税負担をどのように分担するかということと、措置法六三条の適用上、商法上の匿名組合の営業者を譲渡者とみるかということとは相互に無関係であるといわざるを得ない。

従って、原告の右主張は失当である。

(五)  以上のとおりであるから、本件各土地の譲渡によって生じた譲渡利益金額は措置法六三条の適用上はすべて原告に帰属するものとしてこれを取り扱うべきである。

(六)  次に、本件各土地の譲渡による譲渡利益金額について検討する。

措置法六三条一項にいう当該土地の譲渡等に係る譲渡利益金額は土地の譲渡等による収益の額からその収益に係る原価の額及び土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額を控除した金額をいい、右の土地の譲渡等による収益の額とは土地等の譲渡等の場合にあっては、当該土地等の譲渡の対価の額であり(措置法施行令三八条の四第四項)、土地の譲渡等による収益に係る原価の額とは、土地等の譲渡にあっては、当該譲渡に係る土地等の譲渡直前の帳簿価額(当該帳簿価額のうちに各事業年度において支出した利子の額が算入されている場合には、その額を控除した金額)である(措置法施行令三八条の四第五項一号イ)ところ、本件各土地に係る譲渡の対価の額が別紙四の該当欄記載のとおりであり、原価の額が別紙五ないし七の各「<5>に係る原価の額」欄記載のとおりであることは原告と被告税務署長との間に争いがない。

次に、土地の譲渡等のために直接又は間接に要した経費の額であるが、右は譲渡資産の保有のために要した負債の利子の額と土地の譲渡のために要した販売費及び一般管理費の額の合計額の合計額であるところ、法人が右各経費の額のうち、当該土地の譲渡等に係る部分の金額を合理的に計算して申告した場合には右計算の金額を当該土地の譲渡のために直接又は間接に要した経費の額とすることができる(いわゆる実額配賦法)が、そうでない場合には、いずれも政令で定める計算方法(いわゆる概算法)によることとなる(措置法施行令三八条の四第六、八項)。そして、原告が譲渡のために直接又は間接に要した経費の額のうち第五期及び第六期については販売費及び一般管理費の額を、第七期については負債の利子の額を、それぞれ右の実額配賦法により計算し、法人税申告書に記載したが、原告の右実額配賦法による計算が合理的に行われていないことは原告と被告税務署長との間に争いがない。

それにもかかわらず原告は、原告が小牧税務署職員から実額配賦法により申告するようにとの税務指導を受けたことなどを根拠に原告の第五期、第六期の土地譲渡利益の計算上、販売費及び一般管理費について実額配賦法を採用すべきである旨主張する(被告税務署長の主張に対する原告の反論3参照)が、本件全証拠によっても、原告が昭和四九年七月二四日あるいは同年一〇月ころ、小牧税務署の法人税・源泉所得税第三部門統轄国税調査官長江鋭雄から販売費及び一般管理費について指導され、その指導に係る方法によって原告の第三期、第五期、第六期について販売費及び一般管理費を計算し確定申告をした事実、及び昭和五五年初めころ原告が合理的な実額配賦法により作成した計算明細書を被告税務署長に提出し、第五期、第六期について修正申告しようとしたところ、渡辺恒憲調査官に右計算明細書の計算を修正申告書に記載することを妨害されたとの原告主張事実を認めるべき証拠は何ら存しないから、右各事実の存在を前提とする原告の右主張はその余の判断をするまでもなく、失当である。

従って、本件各土地の譲渡に直接又は間接に要した経費の額については前記概算法により計算すべきである。

そして、右の概算法を採用した場合における課税土地譲渡利益金額が別紙五ないし七の各該当欄記載のとおりであることは、原告と被告税務署長との間に争いがない。

(七)  以上のとおり原告には第五期ないし第七期に別紙五ないし七の各該当欄記載のとおり課税土地譲渡利益金額が存するというべきであり、右に伴う過少申告加算税の計算は適正にされていると認められるから、本件各更正処分等は適法であるというべきである。

3  更正をすべき理由がない旨の通知処分について

原告の第七期事業年度における土地の譲渡についての課税土地譲渡利益金額が金三五七一万五〇〇〇円(別紙七の<11>欄参照)であることは前説示のとおりであり、また、税務署長に対して更正の請求をなす者は、当該更正の請求をなすに際して、申告内容が真実に反することの主張、立証をしなければならないと解すべきところ、本件全証拠によっても原告が本件更正の請求をなすにあたって原告の第七期事業年度分の所得金額の計算が過大であったことの立証をなした形跡を窺うことはできず、本件においても右所得金額の計算が過大であることを認めるに足りる証拠は何ら存しないから、被告のした本件更正をなすべき理由がない旨の通知処分は適法というべきである。

4  本件納税告知処分等について

(一)  原告が、昭和五二年三月一日、原告の役員である冨田一子に対して金四六万六八四九円及び金六八万八七六七円の合計金一一五万五六一六円を支払いこれを支払利息として原告の第五期事業年度分所得金額の計算上損金の額に算入したことは原告と被告税務署長の間に争いがない。

原告は右金員の支払いを冨田一子から借り入れた金員に対する利息の支払いである旨主張し、原告の第五期事業年度分の帳簿には、昭和四九年一〇月三一日に金二〇〇万円、昭和四九年一一月一四日に金三〇〇万円を右同人から借入れ、右借入金を各元本としてその購入期間について年一割の利率をもって計算した額を一括して支払った旨記載されていることは原告と被告税務署長との間に争いがない。

(二)  しかしながら、一方、右借入れについて原告の第五期前に右借入金に対する支払利息を支払った旨の記載は原告の帳簿等に存しないこと、原告の第五期前の貸借対照表及び法人税の確定申告書中に右支払利息の元本たる借入金に係る未払利息が計上されていないことは原告と被告税務署長との間に争いがなく、本件金証拠によっても右金員の借入について利息の約定が存した事実を認めるに足りる証拠は存しない(甲第一七号証をもってしては右約定の存在を認めるに足りない。)のであるから、右支払利息は、冨田一子がその役員たる地位に基づいて支給される臨時的な給与すなわち役員賞与に該当するものというべきである。

従って、原告は所得税法一八三条一項の規定により右金員について源泉所得税を徴収すべき義務があったというべきところ、原告が第五期前の事業年度の期間に係る金七八万〇二七三円についてこれを法的納期限までに国に納付しなかったことは原告と被告税務署長との間に争いがないから、被告税務署長のした本件納税告知処分等は適法である(不納付加算税の計算も適正であると認める。)。

(三)  原告は、冨田一子が既に右金員を雑所得として申告、納税しており、かつ更正請求権も本件納税告知処分より以前に消滅しているから、本件納税告知処分は同一の所得に対し二重に課税する違法なものである旨主張する。

しかしながら、源泉徴収に係る所得税の納税義務は、所得の支払の時に成立し(国税通則法一五条二項二号)、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定し(同条三項二号)、徴収義務者たる支払者が法定納期限までに納付しないときは、税務署長が支払者に対する納税告知によりこれを徴収することになっている(同法三六条一項二号)。このような現行の源泉徴収制度の下においては、国(税務官庁)と直接の関係に立つものは支払者であって、本来の所得税納税義務者たる受給者は制度上も法律上も国と直接の関係に立つものではなく、また、支払者の源泉納税義務と受給者の所得税納税義務とは、法律上全く別個のものであり、後者について生じた理由が前者に法律上の影響を及ぼすことはあり得ないものと解すべきである(最高裁判所昭和五七年一月二二日第二小法廷判決シユトイエル二三九号一頁、その原審東京高等裁判所昭和五五年一〇月二七日判決、判例時報九八七号三三頁参照)。従って、受給者たる冨田一子が前記金員を雑所得として申告、納税していたとしても、そのことは、支払者たる原告の本件源泉納税義務に何らの影響を与えるものではないので、右の点は本件納税告知処分等の違法事由とはなり得ないものというべきである。

従って、原告の右主張は理由がなく、本件納税告知処分等は適法である。

二  原告の被告国に対する請求について

1  原告の請求原因9(一)の事実は、原告と被告国との間において争いがないが、同9(二)の事実、すなわち、小牧税務署長が違法に本件各更正処分等、本件更正をすべき理由がない旨の通知及び本件納税告知処分等並びに原告の請求原因3.7記載の各異議申立てを棄却したとの点については、右各処分が適法であることは前説示のとおりであるから、小牧税務署長がした前記各行為が違法であると認めることはできない。

2  従って、原告の請求原因9(三)、(四)の各事実について判断するまでもなく、原因の被告国に対する請求に理由がないことは明らかである。

三  以上の次第であるから、原告の被告らに対する請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、行政事件訴訟法七条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 加藤義則 裁判官 高橋利文 裁判官 綿引穣)

別紙一〔第五期〕

<省略>

別紙二〔第六期〕

<省略>

別紙三〔第七期〕

<省略>

別紙四 原告の譲渡した土地の明細

<省略>

別紙五

課税土地譲渡利益金額及び税額の計算(第五期)

<省略>

別表六 課税土地譲渡利益金額及び税額の計算(第六期)

<省略>

別表七 課税土地譲渡利益金額及び税額の計算(第七期)

<省略>

別紙八

直接又は間接に要した経費の額の計算(第五期)

<省略>

別紙九

直接又は間接に要した経費の額の計算(第六期)

<省略>

別紙一〇

直接又は間接に要した経費の額の計算(第七期)

<省略>

別紙一一

<省略>

別紙一二

契約当事者一覧表

<省略>

<省略>

別紙一四

原告持分率計算書

<省略>

(注) 不動産番号1.2の持分率を計算するにあたっては、同不動産を取得する際に一括して取得した同不動産を含むより大きい一筆の土地について計算した。

(注) 持分率は、計算上コンマ以下8桁を表示し、最後の桁は4捨5入したもの。

別紙一五 原告持分額計算書

<省略>

(注) チ欄カッコ内の数値は、原告が選択しなかったものである。

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